父の介護から学んだこと~在宅介護の3つのポイント〜

福祉イノベーションDo-zo協同組合の看護師 澤木和子さんの実話から在宅介護について、皆さんへお伝えしたいことを書いていただきました。

プロローグ

  「うわぁ、転んでる、、、」滅多に鳴らない自宅の電話に知らない人からの連絡。なんだろうと思いながら電話に出てみると、父が道で倒れているとのことだった。慌てて駆けつけると、そこには立てなくなった父が居た。

看護師になって30年、ひと目見て骨折しているのが分かった。「大丈夫か?」と心配する気持ちと、やれやれと思う気持ち。運ばれる救急車の中で、これからのことを考え、不安でいっぱいになった。

無事に手術が済み、入院・リハビリを終え退院することが出来た。そして、自宅で静養することになった。10年前に母が亡くなってから父と二人暮らしだったから、また元の生活に戻れるだろうと安易に考えていた。しかし、父は気力がなくなり愚痴も多くなっていった。特に食べる物に関しての文句が多くなったように思う。また、何より転びやすくなってしまった。よく、転ぶ。私が家にいる時なら良いが、仕事に出かけ、夕方帰宅すると、台所に父が倒れていたことがあった。腰の周りには失禁の跡。私は慌てて父を抱き起こし、「いつから倒れてるの?!」とつい口調がきつくなる。心配だけど、安心して仕事に行けない苛立ちが、怒りとなって父に向かってしまう。父も父なりに頑張ってくれているのは理解しているつもりでいるが、私に小言を言うきつい口調の時には、ぶっきらぼうな返事しか返せなくなっていた。

父の食事、入浴、排泄など出来る限りの介護をしているのに感謝さえしてくれない。お互いの関係性がどんどん悪くなっていく。

  私は当時、始めたばかりのFacebookに父の介護の様子を投稿するようになっていた。それを読んだ友人がある日「介護の相談をした方がいいと思うよ。でないと、二人とも潰れちゃうよ」と言ってくれた。えっ?介護?相談?

ポイント① 介護はいつから始まる?

『いつもと違う様子があれば介護の始まりのきっかけ!』

さあ、今日から、介護がはじまりますよ!とはならない。

私の場合、介護の崖っぷちに立っているのに、それすら気づいていなかった。父が骨折したけれど家に居るし、頑固になってきたけれど、それは昔からだし、食事に気を配るのも、年をとったら当然のことだと思っていた。看護師なのに、自分の事になると、全く気付いていなかった。もう既に介護が始まっていたのだ。

ポイント② 介護は家族だけでやらないといけないの?

『専門家に相談することが本人や家族が楽に生きられる。みんなが、幸せに生きる為に専門家は存在するのだ!』

友人が地域包括支援センターを教えてくれたので、私は直ぐに相談に訪れた。そこで、担当するケアマネージャーさんを紹介され、具体的に介護をしてくれる事業所が決まった。父は介護認定を受け、介護のサービス内容が決定した「要介護1」である。

今はまだ週2回の訪問看護だけであるが、コロナ禍が落ち着いたら、デイサービスにも行く予定にしている。手すり、歩行車などの福祉用具も利用している。私は親である父の介護を一人でやらないといけないと思い込んでいた。ところが、「助けてくださーい」って、声をあげたら沢山の専門家の人たちが父の介助のためにパァーっと集まって分担して担当してくれた。しかも、父に対して本当に優しく接してくれている。楽しそうにオセロゲームをする父の顔を久しぶりに見た。昔話も、私だと「その話、もう聞いた」となるところを、訪問看護師の方たちは、うなずきながら聞いてくれる。水分を摂るときに欠かせないとろみについての説明も父が理解できるように、ゆっくり丁寧に話してくれた。私一人で全てを抱えなくても良くなったので、精神的にも体力的にも本当に楽になった。

とはいえ、父が易怒性のためイライラしたり、ネガティブなことを言ったりする時がある。私が無理して有休を取り介護しても、一生懸命食事を作っても、文句を言われると本当に辛くて「こんなにやっているのに!」と泣けた日もある。

「もうイヤだ!」「やりたくない!」なんて、疎ましいんだ!

ポイント③ 「イヤイヤやっている」「疎ましい」「怒れる」とは、決して思ってはいけない?

答えは「いいえ、思ってもいい!」

弱音、愚痴、怒りはOK。自分の状況を観察しながら、我慢しないで相談できる人や場所を作るべき。私はケアマネージャーさんと、訪問看護師さんに相談出来る。何でも話す。どんな些細な事でも聞いてくれてアドバイスをくれる。そして、私の味方になってくれる。だから『まぁ、明日も頑張ろう』って思える。

まとめ

 介護は、明日も明後日も明々後日も・・・毎日続いていく。立場や環境、モノの捉え方は人それぞれなので正解はない。だから、これから起こることに(たとえ、看護師でも)オロオロしてもいい。その時考えればいい。『一人じゃないから!』

福祉イノベーションDo-zo協同組合看護師 澤木 和子


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